- アクアフィリングの売りの1つは、柔らかな仕上がり。その理由はアクアフィリングと人体組織との親和性の高さ(なじみやすさ)にあると説明しています。このため、ヒアルロン酸を注入した時にできるような厚い被膜は作られないのだとか。つまり、アクアフィリングはしこりになりにくいと言うのです。
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当クリニックには、他院でアクアフィリング豊胸を行った結果しこりができたと訴えて来院するゲストが、最近増えてきています。
- アクアフィリング注入後にしこりを訴えたゲストのエコー画像
- アクアフィリングの注入後わずか半年で、しこりとバストの変形を訴えて来院されたゲスト。
エコー検査を行ったところ、アクアフィリングの塊が確認されました。
アクアフィリングは3~5年は効果が持続すると言われていただけに、かなりショックだったことでしょう。
- アクアフィリングは98%の水分と2%のポリアミドで構成されており、万一、注入後に取り出したくなったとしても、生理食塩水を加えれば容易に体外に排出できると説明しています。つまり、ゲストの希望に応じていつでも取り出すことができる、安全な素材だと言うのです。
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当クリニックでアクアフィリングのしこり除去を試みたところ、生理食塩水での溶解・除去は、決して容易なものではありませんでした。
- 生理食塩水で溶け切らなかった、アクアフィリングのしこり
- アクアフィリングのしこりを生理食塩水で溶かそうと試みましたが、すべては溶け切らず、一部は固まったままに。
最終的には、太めの注射針でどうにか吸い出しました。
- アクアフィリングは2004年から7年間の臨床研究を経て、十分に安全性が確認された物質だと説明されています。また、妊娠中の女性と授乳婦の安全性に関する厳格な試験をパスしており、その結果、欧州CEマークの許可を得ているとのこと。安全に授乳できると言うのです。
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美容大国のアメリカ、韓国では、アクアフィリング豊胸にすでに懐疑的な目が向けられるようになってきています。アメリカの厚生労働省にあたる国家機関(FDA:米国食品医薬品局)は豊胸を目的とした充填剤(アクアフィリングを含む)の使用を認可していません。理由は、慢性炎症、異物性肉芽腫、皮膚潰瘍などの合併症が懸念されるためです。
また、韓国美容・乳房再建医学会も同じく、安全面への配慮から豊胸目的のアクアフィリングの使用に反対の立場を示しています。- 韓国の学会は、安全性を疑問視するレポートを発表
- Yonsei大学のTai Suk Roh教授(韓国)は2016年、Archives of Aesthetic Plastic Surgery誌を通じて、韓国美容・乳房再建医学会のアクアフィリング豊胸に関する正式な見解を明らかにしました。
“授乳に影響しない”は、アクアフィリング豊胸ならではのメリット?
アクアフィリングの広告では「妊娠中の女性と授乳婦の安全性のための“厳格な試験”をパスしており、その結果、欧州CEマーク許可を得た」との表記を頻繁に目にします。このことから、アクアフィリング豊胸後は授乳も安全に行えると言うのです。
とはいえ、シリコンバッグ豊胸、脂肪注入豊胸、ヒアルロン酸豊胸のいずれにおいても授乳への影響は否定されていますから、“授乳が安全に行える”は、なにもアクアフィリング豊胸ならではのメリットではありません。少し意地悪な見方をすれば、取り立てて主張するほどのことでもない情報に“欧州CEマーク”なる権威の傘かぶせて、大げさにアピールしているにすぎないようにも見えます。
「豊胸のよくある失敗Top10」を分析してみると、
その多くがバッグを使うことに起因していることに気づくと思います。
人間の体の防御反応として、バッグのような「異物」が体内に入ってくると、バッグを取り込むように膜を作り、押し出そうとします。するとバスト全体が硬くなり、形がいびつになってきます。これが「カプセル拘縮」です。どんなに経験のあるドクターでも、これは避けられません。
欧米の女優などで、自然に谷間が寄らず、いかにも硬そうなバストをしている女性を見たことはありませんか? 症状が進むと、すでに見た目からカプセル拘縮がわかってしまう状態になります。
カプセル拘縮を「体質によって起こる」と説明するドクターがいますが、片側しか拘縮しない患者さんもいます。日本では年間約2万件のバッグ豊胸が行われているとされますが、毎年約2千人がカプセル拘縮を起こしている計算になります。
あなたがその一人にならない保証はありません。
ドクターなら知っている「カプセル拘縮」診断基準※放っておくと段階が進みます
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- バスト本来の触感より硬いものの、見た目は普通のバスト。
皮膚が張っている状態にも見える程度で、本人も気づかない場合が多い。
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- 触感は明らかに硬くなってきたが、見た目は普通のバスト。
だが谷間が寄らなくなり、本人も自覚。パートナーから指摘を受ける場合も多い。
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- 触感が硬く、見た目にもいびつになってくる。
人に見られたり触られたりするのを避けるようになる。
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- 硬いだけでなく痛みもあり、見た目にもゆがんでいる。
人に見せられず、痛みで触られたくないため、性生活が困難に。
カプセル拘縮の診断には、「ベッカーインデックス」という分類法が使われます。カプセル拘縮を起こすとバッグを取りだす以外に方法はなく、伸びた皮膚の処置などで新たに再手術が必要になってきます。一度カプセル拘縮を起こすと、拘縮した組織を摘出しても、バッグを体内に入れている限り、再度拘縮を起こす可能性が極めて高くなります。
カプセル拘縮がなかったとしても、バッグの不自然さに悩んでいる人は多いようです。
もともとバストの脂肪が少ない人が豊胸術を受けるのですからどうしてもそれは避けられません。
アメリカでバッグを入れる豊胸術が盛んなのは、日本人と違い、ある程度の乳腺組織や脂肪がある方が、さらに大きくしようとするケースが多いためです。日本人に比べ、ベースが大きいので、バッグの不自然さがあまり問題になりません。
しかし、日本で豊胸術を受けようとする人のほとんどは、Cカップかそれ以下。
上に乗っている組織が少ないのですから、どうしても皮膚の上からバッグそのものが触れてしまいます。これはどんなに柔らかいバッグを使用しても変わりません。
また、もともと胸が小さい人は、バストの皮膚にも余裕がありませんから、バッグを入れると皮膚がパンパンに張りつめて、ゴムボールのような硬さが残ってしまいます。
もちろん胸を寄せることもできませんし、寝ても自然に流れるバストにはなりえません。
血液の流れていない胸は、冬には冷たく感じます。それでも、洋服を着ている状態できれいなバストのラインは出るでしょう。しかし、触られればまずわかってしまいます。またバストの感覚の麻痺や知覚過敏、異物感や温度の冷たさによる心理的負担から、抑うつ状態になる患者さんの多さも無視できません。
それではどうしてバッグを勧められることが多いのでしょう?
それは、やせ型の人は、脂肪注入に必要な脂肪を確保することが難しかったからです。
バッグを入れたバストは、一生抱える爆弾のようなもの
美容外科の施術の中で、1年以上経ってから不具合のクレームが来る可能性があるのは、ほぼ豊胸バッグだけだといわれています。施術を受けたクリニックに症状を訴えても、「マッサージをがんばって」とはぐらかされたり、「先生がもういないので対応できません」とアフターケアを断られたりして、駆け込んできた患者さんをたくさん見てきました。
カプセル拘縮がなく快適に過ごせたとしても、数年から数十年後に、バッグは必ず老朽化や破損の問題に直面します。非常に珍しいケースではありますが、破損したバッグから流れ出したシリコンが足にたまってしまった患者さんのオペを担当したこともあります。
術後のリスクを考えるなら、バッグを使った豊胸は極力避けることをお勧めします。
前述のように、シリコンバッグを入れたものの、問題を抱えていらっしゃる方は多くいらっしゃいます。しかしバッグを取り出すと、いきなり豊かだったバストがしぼみ、周囲の人にばれてしまうのではと心配して、踏み切れない方も多いようです。
次項では、このようなケースでもシリコンバッグの取り出しと同時に、自分の脂肪の注入によって再び豊かなバストを手に入れられる新治療を紹介いたします。
シリコンバッグによって生じたトラブルの症例の一部をご紹介します。
シリコンバッグは、些細なものから深刻なものまで、いつでもトラブルと隣り合わせであることを十分に理解しましょう。
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- シリコンバッグがカプセル拘縮を起こしてしまっている状態です。
見た目も触った感触もテニス硬球状になってしまっています。
異常な状態であることは明白です。
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- カプセル拘縮を起こしたり、痩せ型の人が無理にサイズの合わないシリコンバッグを入れると、シリコンバッグの形が浮き出て来てしまいます。そのため、寝ても流れずこのように不自然な状態になってしまいます。
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- シリコンバッグの輪郭が浮き出てアンダーバストが二段になってしまった状態(ダブルバブル)です。 拘縮が起きなくても、このようなシリコンバッグ特有のトラブルはいつでも起こり得るものです。